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一般社団法人 日本産業カウンセラー協会東京支部
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相乗効果!カウンセリング×アンガーマネジメント 活用のヒント(連載第5回)

2019.08.16 kouhou

~『怒る上司のトリセツ』著者/宮本剛志さん インタビュー(連載第5回)~

2019年2月に当協会支部のシニア産業カウンセラー宮本剛志さんが本を出版しました。そのタイトルは『怒る上司のトリセツ』(時事通信社)。

カウンセラーとして、研修講師として、働く人のメンタルヘルス支援に関わる宮本さんが考えるカウンセリングにおけるアンガーマネジメントの活用とは。

ご自身の経験を交えた怒りとの向き合い方や書籍出版に対する思いについても、お話を伺いました。全6回の連載でお届けいたします。今回は第5回目です。(第4回はこちら

■怒りに共感することを怖がってはいけない

私は感情に「良い感情」「悪い感情」というものは無いと思います。

心理療法によっても変わりますが、来談者中心療法は、目の前にいるクライエントを中心として、そのまま受け止めます。

例えば、クライエントの語る「怒りの感情」を受け止められないのは、クライエントではなく、カウンセラーの問題ですね。「悪い感情だから受け止めない方が良い」、「反射しない方が良い」と思っているのはカウンセラーであり、クライエントは言いたい訳です。怒っている人は怒りたいから怒っている。それが感情表現ですから。

カウンセラーは、喜怒哀楽、今起こっていることを全て受け止めて、勝手に判断しません。基本的に、その人の感情はその人のもので、カウンセラーのものではない。

つまり、クライエントの感情はあなたの責任ではない。同じ出来事があっても、違う感情を持つ人がいる訳ですから、その点は大事にしたいなと思っています。

例えば、部下からLINEで「今日休みます」なんて突然送られると私はイラっとします。しかし、テレビでIT系か何かの若い経営者が「いちいち電話しないといけないとか、いちいち手書きじゃないと駄目だよ。みたいな考え方の人は、面倒臭いからそういう人とは仕事をしない」と、ハッキリ言っていましたね。

同じ出来事があったとしても、怒りの感情を持つかどうかは、人によって違いますね。今は「LINEの方が便利」という人も多いように、価値観は時代とともに変わってきているかもしれません。

ですから、一般の人ももちろんのこと、カウンセラーもアンガーマネジメントを知っておくと良いと思います。

■これから産業カウンセラーを目指す人へ

私は、産業カウンセラーの資格に出会わなければ今の自分はなかったと思います。

この資格を持つことでいろいろな企業でカウンセリングや研修もできています。「助かった、役に立った」と言ってもらえると、本当にこの仕事をしていて良かったなと思います。自分の人生にも大きな影響を与えたなと感じます。

そもそも資格を取る前も、私は「話を聴くのは上手だ」と思っていました。ところが、実習で全然聴けていないことが分かり、愕然としました。逐語検討でなぜこんなこと言っているのだろうと思うことや、グループの中で自分が一番できてないかもしれないと思う時期もありました。

カウンセリングで大切なことは、クライエントを信じることです。信じていれば、下手なアドバイスをすることも無くなります。自分がカウンセリングをしてうまくいかない時などは、「自分自身が本当に寄り添えていたのか」と原点に戻ります。

私には
「産業カウンセラー」というベースがあり、仕事やカウンセリングの対応の軸がずれてしまった時に戻れる場所があります。

やはり、傾聴をベースとすることが大事ですし、何か失敗したときは大抵傾聴がうまくやれてない時ですね。だから、今でもスーパーバイズを受けたり、事例検討を出したりします。

カウンセリングを学んでいる方には、「細く長く」続けてほしいですね。カウンセリングの勉強は、急に大きく実利に繋がることはありませんが、じっくりやっていくことにより、カウンセリングをベースとした仕事で成り立つ人もいます。摘まみ食いみたいな関りではあまり身にならないかと思います。

~次回は連載最終回 8/23(金)更新予定です!~

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宮本 剛志(みやもと・つよし)

【プロフィール】
宮本 剛志(みやもと・つよし)
一般社団法人日本産業カウンセラー協会シニア産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントトレーニングプロフェッショナル™、株式会社メンタル・リンク代表取締役

教育サービス企業で管理職として、相談・研修・危機管理・コンプライアンスなどを担当。現在は当協会にて産業カウンセラー養成講座協会認定実技指導者・相談室カウンセラー・登録講師、企業・学校にて、研修講師・コンサルタント・カウンセラーとして活躍している。

(取材・文 / 岡澤健治)