代々木事務所 blog
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会東京支部
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職場のパワハラ対策 産業カウンセラーの役割 連載①「職場でパワハラ防止のためにできること」

2022.03.14 kouhou

 

2022年4月より中小企業にも、いわゆる「パワハラ防止法」によってパワハラ防止措置が義務化されるなか、産業カウンセラーの役割も重みを増しています。今回と次回の記事を通し産業カウンセラーの役割について一緒に考えていきましょう。

<やってはいけないことだけ伝えてもパワハラが減らない>
2022年2月にJAICOセミナー「~管理職から新入社員までのハラスメント対策~気づいて防ぐ職場のパワハラ」(詳細はこちら)が開催され、講師を務めました。各企業の担当者様が多く参加されましたが、企業内のパワーハラスメント(以下、パワハラ)対策について困っているとの声をたくさん伺いました。例えば、「パワハラ対策は何度もしているが、マンネリ化している」「パワハラの6類型について伝えているが、一向に減らない」「パワハラが怖くてコミュニケーションを取らない人が増えてきた」等です。
パワハラによって、被害者が心身の不調に陥るだけではなく、周囲も委縮し不健康な職場となり、生産性も低下させます。「やってはいけない」ことだけ従業員に伝えても、効果が見られないことがあります。なぜなら、パワハラ自体は発生した出来事であり、その背景には日々無意識に発している言動・態度・しぐさが積み重なり生まれたものだからです。それを自覚し、改善する必要があります。産業カウンセラーとして、パワハラ行為者と面談をすることがあります。本人は無自覚であり、「パワハラしているつもりはなかった」と言います。つまり、無意識に発している日々の自らの言動・態度・しぐさについて自己理解できていないのです。自分のことが理解できれば改善につながり誰もがパワハラの行為者にならず、パワハラのない職場づくりを実現することができるのです。

 

<インフルエンス・マネージメント®でパワハラ防止>
パワハラが起こる要因は、以下のようなステップで考えると理解しやすいのではないでしょうか。

1.さまざまな要因が影響し無意識のうちに相手にマイナスな言動・態度・しぐさを発する
2.それを相手が繰り返し受け取る
3.その結果、相手の能力の発揮に重大な悪影響などが生じる
4.パワハラとなる場合がある

放置していると、当事者同士のパワハラにとどまらず、職場環境に影響を与えるパワハラになり、懲戒対象となるパワハラに発展し、さらに深刻な事態になることがあります。

上記を踏まえ、日本産業カウンセラー協会ではパワハラ対策にインフルエンス・マネージメント®をご提案しています。インフルエンス・マネージメント®とは、対人関係を改善するための手法です。パーソナリティ(無意識のうちに相手に発している、言動・態度・しぐさ)の影響を自分で認識し、プラス・マイナスの影響を確認します。必要に応じて改善することで、人間関係を良好にします。管理職から新入社員まで誰もが活用できる手法となっています。

<産業カウンセラーとともに対人関係改善を>
マイナスのパーソナリティを相手が受け取るとどう思うでしょうか。相手もあなたに対してマイナスなパーソナリティを発することになるのではないでしょうか。つまり、コミュニケーションはお互いのパーソナリティの交換によって成り立っています。そのため、相手を変えるのではなく、自分のパーソナリティに向き合い、見直すことがより良い関係作りにつながるのです。一人で自分のパーソナリティに向き合うよりも、心のプロである産業カウンセラーと一緒に取り組むことにより、気づきにつながり改善したという事例が数多く寄せられています。

例えば、Aさんが職場全体に自分はどんなパーソナリティを発しているのか考えたところ、「思いやり」「やさしさ」をあげました。一方で、苦手な従業員にはどのようなパーソナリティを発しているのか考えたところ、「冷たい」「堅苦しい」というパーソナリティを発しているかもしれないとのことでした。「冷たい」「堅苦しい」というパーソナリティを受け取った従業員はどのように感じるでしょうか。「私にだけ嫌がらせをする」「私のことは嫌いなんだろう」と感じてしまうかもしれません。その結果、相手があなたにマイナスのパーソナリティを発し、こちらはさらに苦手になり、「怒りっぽい」等のパーソナリティを発することが繰り返され、パワハラに発展することがあります。
そのため、インフルエンス・マネージメント®で、自分のパーソナリティを分析し、必要な場合は改善するための計画を立て実行し、パワハラ防止につなげます。自分に向き合うことによって、時には悩むこともありますが、仲間との意見交換や産業カウンセラーによる支援によって、Aさんは自分に気づき「楽になった」「どうすればいいのか分かった!」と言い、その後パワハラ防止に率先して取り組みました。心のプロである産業カウンセラーならではのパワハラ防止への関わり方ではないでしょうか。
また、プラスの影響を与えていると思われるパーソナリティにも気づいてもらいます。プラスの影響を与えているパーソナリティは積極的に職場で増やしていくことで、お互いがイキイキとした関係になっていきます。そのような関係になればパワハラを生まないだけではなく、健康的で生産性の高い職場に生まれ変わるでしょう。そのお手伝いができるのが産業カウンセラーだと思います。

*上記のAさんは、架空の人物です。

※次回連載へ続く(2022年4月更新予定)

<文>
宮本 剛志(みやもと・つよし)

一般社団法人日本産業カウンセラー協会シニア産業カウンセラー、公認心理師(国家資格)、2級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)、株式会社メンタル・リンク代表取締役

教育サービス企業で管理職として、相談・研修・危機管理・コンプライアンスなどを担当。現在は当協会にて産業カウンセラー養成講座協会認定実技指導者・相談室カウンセラー・登録講師、企業・学校にて、研修講師・コンサルタント・カウンセラーとして活躍している。

【宮本剛志先生の著書紹介】
『怒る上司のトリセツ』時事通信社

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