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一般社団法人 日本産業カウンセラー協会東京支部
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セミナー・研修

月例研究会「生きづらさを抱える若者たち」

2017.01.17 代々木ブログ編集者

2016年12月8日、会員部主催の月例研究会にて高塚雄介先生(明星大学名誉教授、公益財団法人日本精神衛生会理事)による「生きづらさを抱える若者たち―なぜ増える若者のひきこもりと自殺―」が開催されました。

高塚先生は、若者のひきこもりについて30年近く研究と臨床活動を続けてこられ、その経験から、ひきこもりの心理的要因、近年増加する若年層の自殺とひきこもりの関連等についてお話しいただきました。

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若者には、自分のことを分かって欲しい、自分の存在を認めてほしい、自分をありのまま受け止めて欲しい願望があります。そのような自己肯定感へのこだわりが強いけれども、それがなされないと、自分への自己否定感も強くあり、矛盾する心的世界を抱える若者もいます。また、自分にとって居心地の良い状態を模索し、生きていくためのエネルギー源となる攻撃性が歪んで出現すると、外に対してはいじめ、校内暴力、家庭内暴力等へ、内に対してはひきこもり、自傷行為、自殺等という形で置き換えられます。

ひきこもりをもたらす心理的要因として、1990年代前半までは社会的規範を重視すること、つまり競争原理やエリート志向のこだわりと挫折が要因に、1995年頃からは個人的規範を重視すること、つまり自分の存在感や自分の目標のこだわりと挫折が要因になると考えられます。

そして、一般の若者にも共通する部分があるのですが、他者からの指示・命令を嫌う自己へのこだわり、批判・評価を恐れこだわりを貫く自信がない、争い・対立を避ける人間関係に対する警戒心と不安感、自己決定・自己責任回避する自己完結への埋没が、ひきこもりの若者の心的世界と言えます。

実は、ひきこもりの若者は、コミュニケーション能力、対人関係を構築する能力、課題を遂行する能力等、現代社会が当然視する教育課題や就業課題について様々な理由から、ついていけないことが多いのです。キャリア教育でその改善を図ろうとしていますが、却ってそのことによって、ひきこもり化が進む面もあると考えられます。

なお、若者のひきこもりについては、『心の危機と向き合う』吉川武彦・高塚雄介編 (遠見書房:発行)に詳しく書かれていますので、参考にしてください。

(文・写真/広報部 北野真由美)